漉き紙のハガキにて便り来る



 紙を漉く小屋に夜昼木の実降る  田中藤穂

 辛夷咲く紙漉くように日を重ね  富沢秀雄

 乳色の水すくひては紙を漉く  田中藤穂

 灯りても水揺らす音紙漉場  田中藤穂

 漉き紙のハガキにて便り来る  アロマ

 紙漉や水の暮れゆく音のあり  村上瑪論

 紙漉の窓にゆふべの雪明り  長沼三津夫

 漉き紙に紅葉沈めて便りする  アロマ

 紙漉きの村の入口三椏咲く  布施まさ子

 濃く薄く山並幾重紙を漉く  鈴掛穂

 漉き紙の和紙に一筆認めて  アロマ

 紙漉場夜もひそひそと水の音  大崎喜美子

 山峡の雪を宝と紙