本を置いて玄関を出ると自然に走った。歩き出してからもかなりの早足だった。
前を行くランドセルの4人がどうも怪しい。一人の男の子を二人の男の子がつかまえていて、女の子が言う。「お兄ちゃん、先生に言ってやめさせて!」
一人は傘を持っているから、もしそれで叩いたら黙っちゃいないよ!と私はガン見する。
傘の男の子は今来た道を戻って行ったが、もう一人が男の子を捕まえ、鉄のフェンスに押し付けている。私はとうとう何も言わずにすれ違いざま二人を見た。いじめられっ子の手には画鋲が握られている。あれで反撃するのか。
私はまた早足で歩き出す。
『余命一年、男をかう』
連載:読書