梶よう子 の 吾妻おもかげ

★3.4 浮世絵の元祖とされる菱川師宣の生涯。
縫箔師の家に生まれた吉兵衛は、絵師になりたくて17歳で江戸に出た。だが、狩野探幽を頂点とする可能派は武士以外の入門を認めていない。

親の仕送りで吉原に通い、ほそぼそと読み本の挿絵を描く10年。明暦の大火が落ち着くと、江戸の民は独自の文化に興味を抱くようになった。吉兵衛はそれまで文章と挿絵が別々の頁だったものを、1枚の紙に納める様式を生み出した。内容も関西で発行された読み物の二番煎じではなく、江戸の版元から挿絵を主体とした読み物が多数出版されたよう。当時はまだ錦絵のような彩色のものは登場しておらず、墨絵で