第四章 男の居場所
外回りの部下たちが三々五々に戻り、退社時間を記録して帰って行く。
「お先ぃ・・・」
「あぁ お疲れさん」
顔を見る訳でもなく、同じ言葉を繰り返す。
純一は部下たち全員が帰ったところで時計を見た。
七時十六分である。
消灯して外へ出ると純一の足は自然に北新地へと向いてしまう。
目的地はクラブ『夕顔』である。
「いらっしゃいませー」
ホステスたちの元気のよい挨拶を受けながら、いつものコーナーにあるテーブルに座る。
「取り敢えずおビールにする?」
「あぁ、そうしてくれ」
純一の担当の留美がビー
連載:金木犀の香る頃に 改訂版