『残りチョコ物語』

この町に、たったひとつだけの喫茶店には、バレンタインから一か月ぐらいの間、カウンターの一番奥に不思議なピラミッドがそびえたっている。
もちろん本物じゃないけど、それは、まるでほんと、ピラミッドみたいなのだ。
誰が始めたか知らないが、チョコをもらっても、なんとも思わないやつらが、ひとつふたつとチョコを置いていくようになって、それがまた、きれいなピラミッド型になっていったのだ。
『一か月後が、楽しみだな』
『早い者勝ちだからね』
常連の女子高生二人組のいつもの会話である。
そう、3月14日は、チョコ争奪戦なのである。ちなみに、私も、一つぐらいは、ねらってるけ