連載:日常1

「前を行く自転車が停まった」

道の左端に自転車がある。爺様が地面に腰を下ろしている。舗道は一段と高くなっていて、そこに腰を下ろしているのだ。

前を自転車が走っていた。停まった。爺様に声を掛けている。私は二人を追い越してバイクを停めた。

3~40代に見える男性が爺様の右手を引っ張り立ち上がらせようとした。

「待って下さい。一緒にやります。頭は痛くないですか?ぼーっとしていませんか?」 
受け答えははっきりしている。

「私がこちらを持ちますから、二人で起こしましょう。」

職場で転倒したお年寄りを起こす時、どんなに痩せていても一人では難しい。爺様は身長も高くがっしりしている。片腕