夜間飛行
見上げれば零下の星々
薄氷に閉ざされた一枚の空
夜明け前の寒気が 突然
鼻孔からなだれ込む
逆巻く肉の内側
泡立つ波に翻弄される 浮き
崩れて消える幾筋の紫煙
凍りつく堤防の先に遠く霞む岬
飛び立てず 揺れる瞳は遙に
胸のざわめきは低く届かず
泡立つ波に魚信は掻き消され
徒に時は過ぎる
日が昇る瞬間(とき)
地平線のまどろみは失せ
赤く染まる影
転調を合図に海鳥が舞う
突然の魚信に いま迸る鮮血
薄氷の空を穿つ 二つの星
開かれた熱き胸に舞い降りた
夜間飛行の揺れる瞳
カテゴリ:エンタメ・ホビー