第二十章 喪服のモデル
純一のいなくなった部屋にはデスクと椅子、シングルベッドだけが残されている。
夫の匂いを消すために、繭子は念入りに掃除機をかけた。
空気の様な存在ではあったが、ぽっかりと開いた空間は何か虚しい。
もし、これがきっかけで本当に愛し合える夫婦に変われるなら、それに越した事はないが、あの純一が本当に一からやり直せるだろうか。
長い別居生活のうちに、新しい彼女が出来る可能性も十分ある。
本人にその気が無くても、男一人の生活と見れば世話を焼きたくて近づいて来る女性が必ず出て来るものだ。言い寄って来る女性に男は
連載:金木犀の香る頃に 改訂版