黒い月の女神

 逢坂剛の「ブラック・ムーン」を読了した。著者はミステリー畑出身の直木賞作家でるが、「重蔵始末」シリーズや「鬼平」シリーズ等の時代小説も幅広く手掛けている。本書は、箱館戦争で戦死した筈の元新選組副長土方歳三が生きてアメリカに渡っていたという、架空の物語のシリーズ第三作である。
 前作で元新選組隊士の高脇正作とネヴァダ準州で決闘して勝利しながら、断崖から谷川に転落した内藤隼人こと土方歳三は、短期記憶を失った状態でコマンチ族のトウオムアとサモナサの母子に発見される。トウオムアは元々、ニューメキシコ準州にあるブラックマン牧場の娘で、ダイアナ・ブラックマンという