限界集落の村興し

 浅田次郎の「母の待つ里」を読了した。著者は直木賞作家であるが、自衛隊入隊や一時期企業舎弟をしていた等、ユニークな経歴の持ち主である。作風は広く、極道小説、時代小説、中国歴史小説、現代小説など多岐に渡っており、「小説の大衆食堂」を自称している。本書は、故郷を持たない人々のために、カード会社が企画した「理想のふるさと」サービスを利用した三人のアラカンの人々の姿を描いた、疑似家族小説である。
 物語は大手食品会社の社長に上り詰めた松永徹が、四十年振りに帰郷する場面から始まる。新幹線の駅から在来線で一時間余りという、岩手県の山の中の駒賀野駅で列車を降りた松永は