連載:花②

「好きな色じゃなかった」

雨戸を閉めようとした手が止まった。不思議な色だ。

好きな色じゃなかった。それが今美しい。夕方7時前。夏至の次の日。

スマホを取り出した。この色、出るだろうか。近付くと花びらに水滴が二粒付いている。昼間雨は降らなかったから、花の内部から出た雫だ。

普段見慣れている物が全く違って見える時がある。凝視したその先に見えて来る別の物。


朝の挨拶の後同僚が言った、
「ドアを開けて入って来た時、便臭や尿臭でなく、花のいい香りが漂って来るってホント嬉しいです」

私はただ花が好きで、百合を育てただけ。球根を太らせたくて早めに花を切って、持って行く場所はご近所さ