浅田次郎「帰郷」

 浅田次郎の他の短編集を読んだ時に本作のことを知り、購入していた。購入してから時間が経っているため、本作のどこが気になって購入したかは既に忘れてしまった。本書は表題作の「帰郷」を含め、何らかの形で戦争の影響を受けた人々の物語を描いた短編6編が収録されている。短編ながら完結した物語世界を紡ぎ出す著者の筆力はさすがである。ただ魅力的な作品群かと問われると、少々微妙と答えざるを得ない。本書の作品群は戦争の影響下にある人々を描いているが、戦争反対や戦争がもたらす悲惨さを訴えることが目的ではない。とは言え、戦争は人々の暮らしに暗い影を落とすことはあっても、プラスの