俳句 大川畑光詳 選
白南風や酢甕の声聞く老杜氏 霧 島 久永のり尾
≪評≫白南風は梅雨が明けた後、明るい空を吹く南風で、陰 鬱な梅雨空に吹く黒南風と対になる季語。春に仕込んだ黒酢 は野天の壺畑で発酵が進む。杜氏は黒酢の呟くような音で 発酵の進み具合を知る。耳を澄ます老杜氏の横顔に焦点が絞 られる。中心は字余りだが、言い換えのきかぬ重さがある。
乾店の訛なつかし盆の市 霧島 内村としお
(ほしみせ)
征きし子の残せし母よ月見草 薩摩川内 満永 泰寛
田植機を洗ふ異国の実習生 鹿児島 中村池塘子
白南風に立つ灯