連載:宗教3

事実を見つめるこころはすぐ曇る

歎異抄第9条に、親鸞の弟子唯円が、師の親鸞に悩みを打ち明ける逸話が記されている。唯円の悩みとはこんなものだった。念仏の道を受け取って、本当は躍り上がるほどの喜びがあってもいいのだが、自分の心は、それを喜んでいるように見えない。浄土へ生まれ変わりたいという気持ちも起きてこない。

親鸞は、「そうか唯円もそういう気持ちを持っていたのか、実は自分もそうなのだ。」と応答する。ついで、そのように喜ぶべき信心のことがらが、喜べないというのは、煩悩のせいなのだ、煩悩が深いのだと語りかける。

その煩悩の正体はなにかというと、私感ではあるが、人間の目には、事実を