『足音ひとつ』

サクサクっと響く枯れ葉の音も、いい感じに思われる。そんなまだ、半分眠いような朝も、たまにはいい。
いつもの公園には、まだ、誰も来ていない。自分ひとりの小劇場だ。
おあつらえ向きに、小さなステージまである。
誰も笑ってくれないが、小芝居をするなら、今かもしれない。

『私、淋しいんです』
『それなら、僕と、踊らないか?』
『でも、私、踊れないんです』
『大丈夫、ほら、こんな風に、僕の手を握って』

その時、私の目の前に、細い手が、伸びてきたのだ。手の主は、苦笑いだ。
足音ひとつ、聞こえなかった、不思議な少年。 もう、公園の外の舗道に向