連載:『日本人とは何か』を考える

加藤周一のlegalとlegacy

「戦前の教育勅語に基づく教育に効果があったのは、
一方に、家族制度の醇風美俗があり、 
他方に大陸海軍とその中国侵略の成功があったからである。
教育勅語は、空言ではなかった。しかし醇風美俗の衰え、陸海軍の敗れ去った今日では言葉の綾にすぎない。もはやその現実的背景がないのだ。『民主主義教育』の内容が、それより遥かに現実的である。したがってより有効である。占領軍の押しつけた教育制度を日本流に改革しようという考えほど、空想的で無意味なものはない。しかし、制度の背景にある現実を改めることは、その制度がどれほど密接にその社会の現実と結びついているかによって決