愛なのか嫉妬なのか

 小池真理子の「アナベル・リイ」を読了した。著者は直木賞作家、エッセイストで、小説家としてはミステリー畑の出身であるが、現在は恋愛小説がメインである。本書は怪奇幻想小説であり、語り手の女性が経験した、彼女の亡くなった親友が引き起こした怪奇現象を描いたものである。
 本書は、還暦を過ぎた悦子という女性が書いた彼女の体験の回想であり、「手記とも記録ともつかないもの」という形式を取っている。
 久保田悦子は浮世離れした性格の両親の間に生まれたたため、逆に現実主義者に育っていた。物語の発端は、悦子が二十六歳の1978年である。その頃悦子は、祖父が練馬区の大泉