連載:オカンの一人歩き

「久しぶりに自転車に乗った」

馬だ。もうかなり来た事になる。この馬を見る度複雑な気持ちになる。柵で囲まれた面積は馬一頭なら狭くはないのだろうが、学校の運動場には程遠く走っている姿を見たこともない。たった一頭。馬は静かにこちらを見ている。

何度か自転車を停めた。思いがけず風が強かった。畑の土煙が真横に流れて行く。

手前の畑には後ろに手を組んだ腰の曲がった婆様が歩き、近くには男性がトラクターを操っている。二人とも帽子やマスクで顔は全く見えないが、年老いている事は分かる。

梨畑にも人がいる。何もこんな悪天候な日に作業しなくてもよさそうだが、手の届きそうな場所にある木の支柱