俳句 大川畑光詳 選
蘖や門柱残る屋敷跡 鹿児島 中島 典子
ひこばえ
【評】蘖は春に木の根元や切株から吹きだす新しい芽のこと。残る門柱を見るとかなり立派な屋敷だったことが分かる。庭木はすっかり伐られているが、切株には若い芽が延びている。「孫生え」の意味である蘖と、継ぐ子孫もおらず取り壊されてしまったという屋敷跡との取り合わせに人の世の無常が感じられる。味わい深い写生句である。
苔纏ふ殉死の墓標まむし草 鹿児島 中村池塘子
背負ふもの全て晒して馬踊り 霧島 秋野 三歩
啓蟄や隠れ念仏洞深く 鹿