五月の風の中で

部屋のすべての窓を開けっぴろげにしてみる。
寒がりの私には、少しヒンヤリするが、やはり心地よい。
遠くに見える山際は、薄みどりの若葉が眩い。
木々は生命の息吹が最も旺盛な時期で、季節は夏へと向かう。

「風薫る五月」というが、これは漢詩の「薫風」からきているらしい。

かぜかをる軒のたちばな年ふりてしのぶの露を袖にかけつる
              (藤原良経-秋篠月清集)
と、和歌にも詠われた。
また俳諧では

風かほる羽織は襟もつくろはず(芭蕉)

高紐にかくる兜や風薫る
薫風や恨みなき身の夏ごろも(蕪村)
などがあ