とんかつ。



日が暮れてまもない頃だった。
二人連れの客だという知らせが入った。

どうせ、素泊まりの、若い男女だろう。
そう思いながら玄関に出てみると案に相違していた。

地味な和装の、年配女性が一人。
戸口の隅に、ひっそり立っている。
つれの人の姿は、見えない。

「空きがあれば、二泊したいのですが…」

女性は言った。
言葉に、日ごろ聞き慣れない訛りがある。

「はいはい。承知いたしました」

「二人でお部屋が一つ欲しいんですけんど…」

「承りました」

女性はホッとしたような様子をみせ大きなバッグ
を降ろ