アラーウッディーンの死

 北方謙三の「チンギス紀 (十六) 蒼氓」を読了した。著者はハードボイルド出身の作家であるが、先年完結した大水滸シリーズ等、最近は中国史を題材とした歴史小説が多い。本書は、ユーラシア大陸に拡がる大帝国の礎を築いた英雄チンギス・カンの人生を描いた物語の第十六巻であり、前巻に引き続き、モンゴル軍とホラズム国との戦いが描かれる。
 カラ・クム砂漠でモンゴル軍に敗れたホラズム国の帝のアラーウッディーンは西方に敗走するが、それでも五万騎の騎馬隊を保持していた。チンギス・カンはスブタイ、ジェベ、バラ・チェルビにアラーウッディーンの追撃を命じる。その頃皇子のジャラー