わかってるけど

『蒸し暑くて、やりきれないね』
『35度だって』
『暑くて、当たり前』
『まだ、梅雨明けもしてないのに』
『夏の予定は?』
『ない』
『即答だね』
『だって、ほんとだもの』
『俺は、あるよ』
『わあ、いいなあ』
『君も、一緒だよ』
『どういうこと?』
『あれ、忘れちゃったの?』
『何を?』
『8月16日の夕方、あの海岸を散歩するって、一年前に』
『わかってるけど』
『怪しいもんだ』
彼は、笑ってるけど、彼女は、ちょっと冷や汗かな。
ふたりは、やはり、いつもこんな感じなのだ。

カテゴリ:アート・文化