連載:一語一恵

この秋はなんで年寄る雲の鳥  芭蕉


  今年の秋は、なぜこんなに老いの寂しさが身にしみるのだろうか
  はるかな雲の中に消えて行く鳥が見えるが、まるで漂泊の生涯を送ってきたわが身のように感じられる

 元禄7年9月26日、芭蕉51歳の作
 芭蕉は9月29日に病床に臥してから、亡くなるまで立ち上がることは無かった
 その3日前の作とされている

 旅懐(りょかい)
 この句は、その朝より心に籠りて念じ申されしに、下の5文字にて寸すんの腸をさかれけるににや
 これはやむごとなき世に「何をして身のいたずらに老いぬらん年の思はんことぞやさしき」(古今集・詠み人知らず)を、