禅寺の裏に一匹赤蜻蛉



 よぎりしはしかと蜻蛉なりしこと 稲畑汀子

 竹やぶの日向塩辛蜻蛉とぶ   大崎紀夫

 蜻蛉を夕日に染めて母校かな 浜福恵

 青空へ蜻蛉の翅ひかり透く  田中臥石

 禅寺の裏に一匹赤蜻蛉  アロマ

 大地震の前ぶれならむ蜻蛉涌く  志方章子

 蜻蛉と共に湖畔を引返す 稲畑汀子

 蜻蛉の消えたる空のはたと暮れ  今橋眞理子

 風生れ蜻蛉の道出来上る 稲畑廣太郎

 幼な子の声に蜻蛉の目がうごく  戸栗末廣

 蜻蛉のために都心の空がある 稲畑廣太郎

 きらきらと蜻蛉とび交ふ庭の午後 鈴木