類いまれな軍略家

 谷津矢車の「ぼっけもん-最後の軍師 伊地知正治-」を読了した。著者は歴史小説、時代小説作家である。本書は、戊辰戦争で活躍し、「類いまれな軍略家」と称えられた薩摩の軍師伊地知正治大政奉還の半生を描いた歴史小説である。なお、本書では晩年に主人公が薩摩に帰った明治十五年のパートと、戊辰戦争から西南戦争までの戦いのパートが交互に描かれており、前者は完全なフィクションである。なお、タイトルの「ぼっけもん」とは鹿児島の方言で、「怖いもの知らず、大胆な人」を意味する。
 薩摩藩の江戸屋敷で生まれ育った柴山七之助は、天涯孤独で薩摩に戻る。薩摩で貧窮に喘いでいた彼は、