爺様のひと言でワッと笑い声が起きた。
「ありがとうございます、○○さん、そうですよね、全部ですよね」
新しく入居してきた爺様は、一日中椅子に座り下を見ているだけ。食事も介助しなければ食べないし、水もストローで飲んでいた。
医師が薬を減らした。
すると最初は怒るようになったが、ある日健康な人と変わらない会話が出来る日があった。
ところがそれは一日きりで、また最初の不活発な爺様に戻ってしまった。まるで映画『レナードの朝』だ。
久しぶりにホームに行くと爺様はしっかり目を見て話し表情があると思った。私に遊び心が芽生えた。