『万葉集』を訓(よ)む(その二千七十六)

 今回は、一七〇九番歌を訓む。題詞に「獻弓削皇子歌一首」とあって、本歌は、「弓削皇子(ゆげのみこ)に獻(たてまつ)る歌(うた)」である。前に同じ題詞の「獻弓削皇子歌三首」(一七〇一番歌〜一七〇三番歌)があった。弓削皇子(ゆげのみこ)は、天武天皇の子で、母は天智天皇の皇女、大江皇女である。
 本歌には、左注「右柿本朝臣人麻呂之歌集所出」があり、この「右」のさす範囲をめぐって諸説があるが、ここでは阿蘇『萬葉集全歌講義』のいう、「一六八二以下の、二十八首。」としておく。この説を取るのは、井上新考、全註釈、窪田評釈、注釈など。他の説としては、本歌の一首をさすとす