『万葉集』を訓(よ)む(その二千八十二)

 今回は、一七一五番歌を訓む。題詞に「槐本歌一首」とあり、本歌は「槐本(つきのもと)の歌(うた)」である。「槐本」については、金井『萬葉集全注』が次のように注している。

 ○槐本 「槐本」は作者の氏の名であろう。次の一七一九歌までそうした略式の作者名が記されている。「槐本」の訓については、⑴ヱノモト、⑵ヱニスノモト、⑶カキノモト、⑷ツキノモトの四種がある。⑴は本草和名に「槐実」に和名恵乃美と註してあることによる。万葉考、全註釈、旺文社文庫本などが採る。⑵は和名抄に槐を和名恵爾須とあるのによる。童蒙抄、略解、古義、全釈、総釈などの訓。⑶は「柿本」の誤字と