『万葉集』を訓(よ)む(その二千八十三)

 今回は、一七一六番歌を訓む。題詞に「山上歌一首」とあり、左注には「右一首或云歌」とある。つまり、本歌は、題詞によれば「山上(やまのうへ)の歌(うた)」であるが、左注には「川嶋皇子(かはしまのみこ)の御作歌(みうた)」とあり、題詞に「幸于紀伊國時川嶋皇子御作歌 [或云山上臣憶良作]【紀伊(きの)國(くに)に幸(いでま)しし時に川嶋皇子(かわしまのみこ)の御作歌(みうた) [或は云ふ、山上臣憶良の作] 】」とある三四番歌と異伝関係にある。阿蘇『萬葉集全歌講義』の注に「山上 山上憶良のこと。巻一の三四番歌参照。持統四年(六九〇)九月の紀伊行幸の時、川島皇子は