『万葉集』を訓(よ)む(その二千八十四)

 今回は、一七一七番歌を訓む。題詞に「春日歌一首」とあり、本歌は「春日(かすが)の歌(うた)」である。「春日」について、金井『萬葉集全注』は、次のように述べている。

 ○春日 「春日」は後出一七一九の作者「春日蔵」と同人との説があった。しかし同人ならば僅か一首を隔てたのみで作者名表記が異なることは解し難い。また、同一人ならば二首を一括して記すと考えられる。おそらく別人であろうが、誰とも特定できない。一案として春日王説を提出しておきたい。春日王は万葉集中に二人いるが、4・六六九の作者ではなく、3・二四三の作者と同一人とみる。この人は文武天皇の三年(六九九