誰にも知られていない男

 キャサリン・ライアン・ハワードの「ナッシング・マン」を読了した。著者はアイルランド在住のミステリー作家で、世界各地を旅行して様々な職業に就いた後帰郷し、作家としてデビューしている。本書は、連続殺人犯に家族全員を殺害された被害者が、その犯人の正体を暴くために十八年後に上梓したノンフィクションを読んだ犯人の心の葛藤を描いたサイコサスペンスである。なお、本書では被害者の家族が上梓した作中作の「ナッシング・マン」と、犯人の視点が交互に描かれている。
 本書の冒頭で、後にマスコミがナッシング・マンと呼ぶことになる犯罪者の被害者の名前が列記されている。ナッシング・