呪われた小説

 恩田陸の「鈍色幻視行」を読了した。著者は直木賞作家で、ファンタジー、ミステリー畑の出身であるが、最近は青春小説や音楽小説、それらのクロスジャンルの作品等、レパートリーが広がっている。本書は初出が2007年10月で、2022年7月までネット媒体や雑誌に連載されたものを単行本化した作品で、呪われた小説「夜果つるところ」の謎を巡るミステリーである。
 本書が描くのは、三度映画化が試みられたが、いずれも重大事故のために中止になったために、「呪われた小説」と呼ばれる「夜果つるところ」の謎である。香港へのクルーズ船で同作の関係者が一堂に会し、同作の思い出を語り合う