『万葉集』を訓(よ)む(その二千九十三)

 今回は、一七二六番歌を訓む。題詞に「丹比真人歌一首」とあり、本歌は「丹比真人(たぢひのまひと)の歌(うた)」である。「丹比真人(たぢひのまひと)」について、金井『萬葉集全注』は次のように注している。

 ○丹比真人 名を欠くので誰とも知られない。天武紀十三年(六八四)十月に丹比公(きみ)が真人の姓(かばね)を賜わったことが書紀に見える。万葉集には、丹比真人を名告る歌人が、乙麻呂、国人、屋主とあり、他に題詞に笠麻呂、県守の名がある。また「丹比真人」とだけ記されて名を欠く人物の歌が、巻二の二二六、巻八の一六〇九にあるが、当該歌の作者と同一人物であるか否か不