『万葉集』を訓(よ)む(その二千九十五)

 今回は、一七二八番歌を訓む。題詞に「石川卿歌一首」とあり、本歌は「石川卿(いしかはのまへつきみ)の歌(うた)」である。「石川卿」について、金子『萬葉集全注』は次のように注している。

 ○石川卿 石川卿は石川年足か(古義)、石川宮麻呂(注釈)かと考えられる。年足は19・四二七四に作がある。天平七年(七三五)従五位下、天平宝字六年(七六二)、御史大夫正三位兼文部卿神祇伯で薨。時に七五歳とある(続日本紀)。大伴家持らが派遣され弔問した。年足が従三位を授けられたのは天平勝宝五年(七五三)九月で、題詞の「石川卿」は原資料のままの表記と推定されるから、それがそん