『万葉集』を訓(よ)む(その二千九十六)

 今回は、一七二九番歌を訓む。題詞に「宇合卿歌三首」とあり、本歌〜一七三一番歌の三首は「宇合卿(うまかいのまへつきみ)の歌(うた)」である。「宇合卿」について、阿蘇『萬葉集全歌講義』は次のように注している。

 宇合卿 藤原不比等の第三子。母は蘇我武羅自古の女娼子。式家の祖。本名、馬養。霊亀二年(七一六)八月、遣唐副使、同月、正六位下から従五位下に。養老三年(七一九)正月、正五位上。同年七月、常陸守、神亀元年(七二四0四月、蝦夷反乱、陸奥大掾が殺されたことにより、持節大将軍に任命され遠征。時に式部卿正四位上。同二年閏正月従三位。同三年十月、式部卿従三位と