『万葉集』を訓(よ)む(その二千九十七)

 今回は、一七三〇番歌を訓む。本歌は「宇合卿歌三首」の二首目。
 写本に異同はなく、原文は次の通り。

  山品之 石田乃小野之 母蘇原
  見乍哉公之 山道越良武 

 一句「山品之」は「山品(やましな)[山科]の」と訓む。「山品」は、地名「やましな[山科]」。「之」は漢文の助字で、連体助詞「の」。『日本国語大辞典』に「やましな【山科】 京都市の行政区の一つ。市の南東部、山科盆地の北半部にある。京都と大津を結ぶ交通の要地。かつては茜(あかね)・ナスを産したが、現在は住宅地となる。天智天皇陵、随心院、勧修寺(かんじゅじ)などがある。昭和五一年(一九七六