おばぁちゃんの文化遺産


何時の頃からだろうか、生まれ育った故郷金沢の祖母ばぁちゃんが、夢の中に現れるようになった。昭和三十年代、貧乏だった我が家は夫婦共稼ぎ、僕は一人暮らしのおばぁちゃんの家で面倒を見てもらうことになっていた。ばぁちゃんは娘ばかり六人産んで、加賀伝統の古い家に住んでいて、二階屋で結構広い部屋がいくつもあった。僕が小学校に上がった頃は、帰宅するとランドセルを放り投げ、ぁちゃんの家に行った。それは必ずおやつを用意してあるからだった。「ばぁちゃん、おやつ」僕は甘えたように、ばぁちゃんの顔を見ると言う。「よっちゃん、今日は氷室のまんじゅう食べまっし」僕の子どもの頃の呼