皇帝への道

 馳星周の「北辰の門」を読了した。著者は、ロマン・ノワール(暗黒小説)作家である。本書は、藤原不比等を描いた「比ぶ者なき」、藤原四兄弟と長屋王の壮絶な権力争いを描いた「四神の旗」の続編で、皇帝を目指した藤原仲麻呂(恵美押勝)の半生を描いた歴史ノワールである。
 藤原仲麻呂は藤原南家の祖である藤原武智麻呂の次男として生まれる。しかし、天平九年(737年)、天然痘の流行により武智麻呂を始めとする藤原四兄弟が病死したため、仲麻呂の後ろ盾は叔母の光明皇后だけになってしまう。そんな仲麻呂を光明皇后と聖武天皇の娘で皇太子ある阿部内親王(後の孝謙天皇)が慕う。阿部内親