「永井紗耶子」の日記一覧

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永井紗耶子 の 「きらん風月」

★3.3 戯作者・栗杖亭鬼卵(りつじょうてい きらん、1744年 - 1823年)の生涯。 河内国の佐太に生まれた伊奈文吾(後の栗杖亭鬼卵・りつじょうていきらん)は陣屋の手代を務める17歳。父親の勧めで大坂北堀江の狂歌師・栗柯亭木端(りっかていぼくたん)に弟子入りした。元僧侶の木端は狂歌師として機内のみならず、出羽や豊前、豊後なども含め70人もの弟子を持つ一門であるが、文人墨客の集まるところ。…

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永井紗耶子 の 「絡繰り心中」

★3.3 作者のデビュー作品。 遠山金四郎は早朝の吉原田んぼで花魁の斬殺死体を見つけた。父の盟友である太田南畝に事件を調べろといわれる。金四郎は実家を飛び出し、木挽町の森田座で笛方の見習いの身、相方は浮世絵師の歌川国貞である。 殺されたのは雛菊という花魁で、武家のの娘からある日突然に売られた身。どうやら足抜けした雛菊が心中を図った形跡がある。相手は誰だったのか、殺したのは誰か。事件を解くカギは…

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永井紗耶子 の 「木挽町のあだ討ち」

★4.0 この3年ぐらいの間で最高の作品と思える。 「木挽町の仇討」は木挽町芝居小屋の裏手で実際にあった、ある藩士の息子の16歳の菊之助が仇の作兵衛を討った話である。ところが2年後、その話が聞きたいと18歳の参勤交代で出府したという菊之助の友だという武士が現れた。そして森田座の裏方を務める5人の男に次々と聞き取りをおこなっていく。 「芝居茶屋の場」木戸芸者の一八 ・芝居小屋の前で2、…

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仇討ちかあだ討ちか

 永井紗耶子の「木挽町のあだ討ち」を読了した。著者は時代小説作家で、2010年に「絡繰り心中」で第11回小学館文庫小説賞を受賞して作家デビューし、2023年に本書で第169回直木三十五賞と第36回山本周五郎賞を受賞している。本書は、謎の若武者が関係者にインタビューすることにより、二年前に木挽町の芝居小屋の前で起こったあだ討ちの真相を明らかにするという形式を取っている。  第一章「芝居茶屋の場」…

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永井紗耶子 の 女人入眼(にょにんじゅげん)

★3.4 第167回直木賞候補作。 女人入眼とは愚管抄からの引用で「この世は最後は女人の手によって造られる」といった意味らしい。後白河法皇に寵愛され権力を持った丹後局(鈴木京香)に仕える女房の周子(ちかこ)の目を通して、京の政局と鎌倉内の権力闘争を女の立場を中心に描いていく。 朝廷内の勢力バランスを重視する丹後局は大江広元の先妻の娘である20歳の周子を鎌倉に派遣する。大姫の入内を積極的に支援…

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永井紗耶子 の 商う狼: 江戸商人 杉本茂十郎

★3.5 物語は文化3年に始まる。定飛脚問屋の大坂屋茂兵衛(茂十郎)は町が管理する永代橋の崩落事故で妻と長男を亡くした。橋の老朽化が放置されたためである。 茂兵衛は町年寄の樽屋与左衛門、勘定所御用達の札差伊勢屋の堤弥三郎、北町奉行・小田切直年などの支援を受け問題に取り組んでいく。「飛脚の運賃を守る「飛脚定法」を奉行所に認めさせ、砂糖問屋の菱垣廻船離れと菱垣廻船そのものの老朽化問題に取り組む。 …

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永井紗耶子 の 横濱王

★3.7 関東大震災で肉親を失った男女を通じ、震災復興に尽力した富豪・原三渓を描く。 昭和13年、横浜に帰ってきた青年実業家の瀬田修司はジャズ歌手の絵里子に再会する。2人は被災時に三渓に恩があった。 瀬田は原三渓からの出資を得ようと関係者に聞き取りを行うが・・。絹で財をなし、富岡製糸場他を所有した大富豪は、私財を投じ色んな事業を行っていた。だが、10数人を取材しても醜聞のひとつも聞くことがで…

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永井紗耶子 の 大奥づとめ

★3.5 大奥に勤める悩める女たちの6つの短編。 琴や舞などの芸能や歌を専門とする御次から祐筆に転身する女。出入りの呉服屋の女将と共に着物の目を養う呉服の間の女中。 水運びや女駕籠の力仕事の御末でも目立とうとする夕顔。祐筆から表使いを目指すお克。 初午に演じる踊りを習う御三の間のお正とお美乃。榛色の目の白猫がつなげる小姓と御膳所と飼主の御中臈。 それぞれの役目を詳述し登場する女たちの凛と…

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藩校もののような強い絆の「旅立ち寿ぎ申し候」。

永井紗耶子の新作。帯封には「幕末青春ビジネス小説」と。 主人公の勘七は、日本橋本石町の紙問屋・永岡屋の遠縁ということで、七歳で奉公に上がり、18歳でそのまま養子に迎えられた。 勘七には同じ手習い所に通った友がいた。直次郎は商家の生まれだが足軽侍に、紀之介は料亭・菊十の跡取り息子、新三郎は札差・大口屋に奉公している。 物語は幕末、直次郎が桜田門外の変で命を落とすところから始まる。残った3人に…