「伊集院静」の日記一覧

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伊集院静「ミチクサ先生 下」

 漱石はやはり傑出した人物であり、文部省の第1回給費留学生に選ばれイギリスに2年間留学。帰国後は東大講師に就任。当初は学生の発音を厳しく指導し総スカンを喰らうも、妻から「聞いている人たちの心を鷲づかみにする方法を勉強してみては?」と示唆を受けると、一躍その講義は大人気を博する。それでも、漱石は教師が嫌でたまらず思い悩む。そして、遂に小説を書く。これがまた情景が目に浮かぶような珠玉の文章だ。しかし…

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伊集院静「ミチクサ先生 上」

 夏目金之助は旧名主の六男として生まれるが、「恥かきっ子」として養子に出される。金之助は学問に秀でるも、養子先では進学させる気はなく、実兄の後押しもあり実父から学費を借りて進学する。養子先にも実家にも安住の地はなく、まだ幼かった金之助はアイデンティティの不安を覚え、自分の足で立たねばならないことを自覚する。とは言え、金之助は孤立無援ではなく、養母・実母からは暖かく見守られ、実兄にも気に入られ、人…

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伊集院静 の いとまの雪 新説忠臣蔵・ひとりの家老の生涯 上下

★3.5 作者初めての時代小説とか。物語は赤穂藩筆頭家老の大石 内蔵助良雄(よしたか)の視点で語られる赤穂事件である。 《上巻》 大石26歳の貞享元年(1684年)、若年寄・稲葉石見守による大老・堀田正俊への刃傷事件に始まり、元禄11年(1698年)の津和野藩主が勅使饗応役を務めるまで。物語の特徴は大石が将来降りかかるかもしれない災難をあらゆる角度で想定していることにあろうか。 山鹿素行は朱…

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酒とギャンブルといねむり先生

伊集院静の「いねむり先生」を読了した。著者は直木賞を受賞した小説家であるが、レコード大賞を受賞した作詞家でもあり、その他、女優の夏目雅子(白血病で早世)、篠ひろ子が夫人であることでも知られている。本書は、妻(夏目雅子)が病死した後、酒とギャンブルで荒んだ生活を送っていた主人公サブロー(著者)が、「いねむり先生」こと作家の色川武大(阿佐田哲也)と出会い、その先生と交流することにより、精神的に次第に…

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棚田に映る月と銅鐸の輝き

伊集院静の「星月夜」を読了した。著者は直木賞作家で、夫人は女優の篠ひろ子である。本書は、著者が初めて手掛けた推理小説とのことである。  物語は、浅草寺境内で一カ月間開かれる行方不明者相談所から始まる。その相談所を、孫娘の可菜子の消息を求めて、岩手から老農夫の佐藤康之が訪れ、鑑識課の葛西と皆川が対応するが、成果は得られなかった。一方、出雲の旧家に嫁いだ滝坂由紀子は、元鍛冶職人だった祖父の佐田木泰治…