「中村文則」の日記一覧

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理不尽な死

 中村文則の「カード師」を読了した。著者は芥川賞作家で、純文学畑の出身であるが、大江健三郎賞を受賞した「掏摸」の様に、ミステリー風の作品もあり、最近はミステリー風の作品が多くなっている。本書は、違法カジノのディーラーであり、占いを信じていない占い師でもある主人公を巡る、不条理な物語である。  主人公の「僕」は、違法カジノのディーラーとタロットカードを用いた占い師を生業としている。ある夜、占い師…

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最後の命  中村文則 ついでに近況雑記

この小説は 作家の自伝だろうか?ある程度 作家の経験したことなんだろうか。 物語の語り手が 小学校低学年の頃、一年生くらいか?ともだちと一緒に、遊んでいた時、偶然、ホームレス達が同じくホームレスをしていた少し頭の足りない女を大勢で強姦している現場を目撃してしまう。子供たちに気がついたホームレス達から、力ずくで、無理やり女性の胸とかに触らされる。 隙を見て逃げ出すが、女性のホームレスは3日後に…

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私の消滅 中村文則

昨日一日で読んでしまった。 読み始めた途端、この作家特有の 悪夢の世界にはまり込んでしまう。 最初のページの、一行目に 黒字で大きく書かれた、 このページをめくれば あなたはこれまでの人生のすべてを失うかもしれない。 で始まる。 読み終わってみると、ストーリーとしては そんなに込み入ってないようにも思える。途中では、いろんな人が、いろんな立場で過去の回想譚を語るし、出口のない悪夢の世界…

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「掏摸」作: 中村文則 河出文庫

犯罪組織の末端を担わされる事になった若いスリが主人公です。 スリ仲間、犯罪組織のボス、万引き常習の子供などが主な登場人物。 主人公は万引きをする子供に幼い頃の自分を見ます。 運命に従うように万引き常習者からプロのスリとなり、ボスに操られるまま、強盗の一味に加わります。 さらに、大きな犯罪の末端として、書類をスルことを命じられます。 運命を操られる主人公と他者の運命を操る事に快楽を感じるボスを…

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熱狂と名付けられたトランペット

 中村文則の「逃亡者」を読了した。著者は芥川賞作家で、純文学畑の出身であるが、大江健三郎賞を受賞した「掏摸」の様に、ミステリー風の作品もあり、最近はミステリー風の作品が多くなっている。本書は、熱狂と名付けられた悪魔のトランペットを持って逃走する男を巡る、不条理な物語である。  物語は主人公である逃亡者が、ケルンの安アパートで謎の男に襲われるところから始まる。その男は逃亡者に、第二次世界大戦中にフ…

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著者別インデックス:国内(中村文則)

1.銃 (2003.03) 2.遮光 (2004.06) 3.土の中の子供 (2005.07) 4.悪意の手記 (2005.08) 5.最後の命 (2007.06) 6.何もかも憂鬱な夜に (2009.03) 7.世界の果て (2009.05) 8.掏摸 (2009.10) 9.悪と仮面のルール (2010.06) 10.王国 (2011.10) 11.迷宮 (2012.06…

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逃亡者 中村文則

いわくつきのトランペットをもって ドイツのケルンに逃げた男(主人公)の部屋に、鍵を簡単に開けて、背の高い見知らぬ男Bが押し入ってくる。トランペットを渡すよう言われ、知らないというと惨たらしい拷問をされようとする。持っていた拳銃を取り出し撃退するが 男は一週間後君が生きている確率は4パーセントだと言い残して部屋を出る。 いきなり悪夢のような展開。まるでカフカの世界に入ったような描写。読むほどに …

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縄に魅せられて

 中村文則の「その先の道に消える」を読了した。著者は芥川賞作家で、純文学畑の出身であるが、大江健三郎賞を受賞した「掏摸」の様に、ミステリー風の作品もあり、最近はミステリー風の作品が多くなっている。本書は、緊縛師の殺人事件に始まるミステリー仕立ての長編小説である。  本書は多視点で語られる。第一部の語り手は、所轄の蜷川署刑事の富樫で、第二部は富樫の先輩刑事の葉山である。  頭部を鈍器で殴られた緊縛…

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朝、目が覚めたら

 中村文則の「R帝国」を読了した。著者は芥川賞作家で、純文学畑の出身であるが、大江健三郎賞を受賞した「掏摸」の様に、ミステリー風の作品もあり、最近はミステリー風の作品が多くなっている。本書は、近未来において、全体主義が支配する島国のR帝国を描いたディストピア小説である。   R帝国は1%の超富裕層、14%の富裕層、85%の貧困層から構成されており、貧困層の大部分は自らを貧困層とは思わず、貧困層の…

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記憶の消滅と入れ替え

 中村文則の「私の消滅」を読了した。著者は芥川賞作家で、純文学畑の出身であるが、大江健三郎賞を受賞した「掏摸」の様に、ミステリー風の作品もあり、最近はミステリー風の作品が多くなっている。本書は、愛する人を自殺に追い込まれた精神科医の復讐を描いたものである。  「僕」は、古びたコテージの机の上に置かれた手記を読む。その手記の表紙には、「このページをめくれば、あなたはこれまでの人生の全てを失うかもし…

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カルトの終焉

中村文則の「教団X」を読了した。著者は芥川賞作家で、純文学畑の出身であるが、大江健三郎賞を受賞した「掏摸」の様に、ミステリー風の作品もあり、最近はミステリー風の作品が多くなっている。本書は、愛する女性を探す平凡な男性が巻き込まれた、セックスカルト教団のテロ事件と教祖の最期を描いたものである。  楢崎透は友人の小林に、ふとしたことから付きあい出したにも拘らず、自分の前から姿を消した立花涼子の行方の…

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よそ見する神

中村文則の「あなたが消えた夜に」を再読した。著者は芥川賞作家で、純文学畑の出身であるが、大江健三郎賞を受賞した「掏摸」の様に、ミステリー風の作品もあり、最近はミステリー風の作品が多くなっている。  物語の舞台は、東京都内のとある地域である。所轄署の若い刑事で中島と言う名の主人公の「僕」は、深夜に呼び出され、連続通り魔殺人事件の現場に向かうが、二人目の刺殺死体の状況に違和感を覚える。被害者はスポー…

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地獄変の再現

中村文則の「去年の冬、きみと別れ」を読了した。著者は芥川賞作家で、純文学畑の出身であるが、大江健三郎賞を受賞した「掏摸」の様に、ミステリー風味の作品も手がけている。本書は、「ミステリーを書く」と著者が宣言して書き下ろした作品だそうである。  本書の主人公、と言うよりも舞台回しと言うべきか、の「僕」はライターである。僕は、とある編集者の依頼により、2件の連続殺人を犯し、1審で死刑判決を受けて控訴を…