霜柱の朝。唐突に灯油ボイラーが壊れた。 年代物だったから、もう機械の寿命だと思った。 1人暮らしの中、お湯が使えないのは、余計に 寂しい。 急いで電話帳からメーカーを探した。 週末でどこからも断られたが、1社だけ夕方に なるけど見てくれるという。 すぐに依頼した。 日が落ちてやって来たのは白髪で痩躯(そうく) の職人然とした人だった。 なんと自転車で来たという。 お年を聞くと傘寿(80…
それはもうすっかり胸の奥に消えていたことだった。 しかし、ある日 『 笑顔もらえる週末里親』という 新聞の見出しが目に入り、遠い記憶を思い出す事に なった。 私は当時、夫の仕事で東京におり、里親制度に協力 しようと都の審査を受け、小学2年の女の子を2日間 預かることにした。 初めてのことで、少しドキドキしている私を見て 「大丈夫よ、おばさん!」 とその子は笑った。 もうこんなことは慣…