エルビラ・ナバロの「兎の島」を読了した。著者はスペイン在住の小説家である。本書は11篇の幻想小説、ホラー小説等、シュールレアリズムな作品を収録した短編集である。 「ヘラルドの手紙」:休暇で恋人のヘラルドと旅に出て安宿に泊まった女性の話。彼女は安宿とそこに宿泊する人々から受ける閉塞感と、恋人の支配的な言動から逃れ様として、徐々に精神の均衡を失って行く。やがて彼女は、束の間の安息であったシャワ…
三津田信三の「みみそぎ」を読了した。著者はホラー作家、ミステリー作家で、土着の習俗を盛り込んだ怪奇小説風の本格的ミステリーと、実話系怪談で知られている。本書は、「五感」シリーズの第二作で、旧知の編集者から送られてきた怪異の記録を読んだことに始まる実話系のホラーである。 三津田信三にはホラー愛好家の三間坂秋蔵という熱烈なファンがいるが、彼は文芸書ではなく、とある分野の専門書の編集者である。彼…
貴志祐介の「秋雨物語」を読了した。著者はホラー、ミステリー、SFをテリトリーとする作家であり、1996年に「ISOLA」でに日本ホラー小説大賞第3回長編賞佳作を受賞し、同作を改題した「十三番目の人格ISOLA」で、作家デビューしている。本書は、ノンジャンルのホラーの短編集である。 「餓鬼の田」:社員旅行で立山黒部アルペンルートの弥陀ヶ原に泊まって宴会をした翌早朝、喉が渇いて目が覚めた谷口美…
冲方丁の「骨灰」を読了した。著者は、SF、ライト・ノベル作家としてデビューし、その後歴史・時代小説も手掛ける様になり、「天地明察」で2010年第7回本屋大賞、「光圀伝」で第3回山田風太郎賞を受賞している。現在は小説以外に、漫画の原作、アニメの脚本等も手掛けている。本書は、著者初のホラー作品であり、東京の地下に封じ込められた呪いの存在を描いたものである。 物語は2015年の渋谷から始まる。主…
澤村伊智の「ばくうどの悪夢」を読了した。著者はホラー作家、ミステリー作家であり、「ぼぎわん」で2015年第22回日本ホラー小説大賞大賞を受賞し、同書を改題した「ぼぎわんが、来る」て作家デビューしている。本書は、同書に始まる「比嘉姉妹」シリーズの第六作あり、悪夢に憑りつかれた人々の死を描いたホラー小説である。 物語は東京から父親の故郷である兵庫県東川西T台に転居してきた中学一年生の「僕」のモ…
アンソニー・ホロヴィッツの「ホロヴィッツホラー」を読了した。著者はイギリスのミステリー作家、脚本家であり、主としてヤングアダルト向けの作品を手掛けている他に、コナン・ドイル財団公認でシャーロック・ホームズシリーの新作「シャーロック・ホームズ 絹の家」や「モリアーティ」、イアン・フレミング財団公認でジェームズ・ボンドシリーズの新作「007 逆襲のトリガー」を出版している。本書は著者の邦訳初めての…
小池真理子の「アナベル・リイ」を読了した。著者は直木賞作家、エッセイストで、小説家としてはミステリー畑の出身であるが、現在は恋愛小説がメインである。本書は怪奇幻想小説であり、語り手の女性が経験した、彼女の亡くなった親友が引き起こした怪奇現象を描いたものである。 本書は、還暦を過ぎた悦子という女性が書いた彼女の体験の回想であり、「手記とも記録ともつかないもの」という形式を取っている。 久…
私は歯医者が嫌いだ。子供の頃からずっと。 できることなら行きたくない。 しかし、どうしても痛くなれば致し方無い。 近所に「グルメデンタルクリニック」という歯医者がある。 グルメ?ずっと気にはなっていた。 昼食を腹いっぱい食べた後、健康保険証を手に初めて訪問してみた。 かなり重厚な外扉。中には患者は誰もいないようだ。 受付の看護師さんから、初診であればここに記入してく…
澤村伊智の「怪談小説という名の小説怪談」を読了した。著者はホラー作家、ミステリー作家であり、「ぼぎわんが、来る(受賞時は「ぼぎわん」)」で2015年第22回日本ホラー小説大賞大賞を受賞して作家デビューしている。本書は、怪談をモティーフとした短編集である。 「高速怪談」:零細出版社の契約社員の澤口は、関西出身のカメラマンの真柄大輔から、交通費を浮かすため、数人で自動車で帰省することになる。乗…