2020-011:域 風走る沈む心を置き去りに 手負いの酒は域を溢れた 2020-012:雅 優雅さもなく二枚目になれもせず 引きずる恋の垢にまみれて 2020-013:意地悪 意地悪な風にあおられ白塗りの 言葉失い今夜もひとり 2020-014:客 無観客スポットライトは月あかり 老けた女形を演じて愚痴を 2020-015:餌 目の前の餌に食いつく気力失せ 濡れ場も肌も心も枯れて
2020-006:鋭 鋭さも老いてずるさに変わりゆく 恋の鞘当抜けぬ竹光 2020-007:クイズ クイズなら答えはあれど老いらくの 筋が通らぬ恋の難問 2020-008:頑 頑なに心閉ざして捨て台詞 足掻く己にあばよと告げる 2020-009:汁 すまし汁息整えて啜る夜 沈む心をかき混ぜながら 2020-010:なぜ 老いてまた大根役者の恋芝居 なぜ繰り返す諦めもせず
2020-001:君 暁に愛想づかして去る背に 君の名を呼ぶ君(くん)づけにして 2020-002:易 無為徒食ひとり暮らしも板につき 小言なき夜は辟易もせず 2020-003:割 割る酒も残りわずかか夜明け雨 抱擁終える大詰めのキス 2020-004:距離 コロナゆえ修羅場にならぬ愁嘆場 別れの距離は手さえ届かぬ 2020-005:喉 黄昏の喉に絡まる悪態を はかない二人それで幸せ?
2019-096:撫 舌を撫で肌と衣服に染み付いた 煙草の過去をふと思い出す 2019-097:怨 立ち止まるたびに時間は動き出し 過去の怨念また連れてくる 2019-098:萎 老い冷えの萎縮 する手が届かない 恋する夢も新曲にさえ 2019-099:隙 ふたりにはいつも聴こえた隙間風 忘れられない忘れたい音 2019-100:皆 デュエットは君とはいやだ哀しくて 歌えないから皆で歌おう
2019-091:慎 陽射しより明るい君に慎重に 選んだ言葉それは沈黙 2019-092:約束 約束をすればするほど何もかも 抑えきれない嘘がはじまる 2019-093:駐 亡き人の車ポツンと駐車場 朝の光も冷気を増して 2019-094:悟 生きている意味などないとふと悟る それでも歌うひとりカラオケ 2019-095:世間 テレビ無く無言のままの休み終え 世間に向う朝の改札
2019-086:給料 給料の格差広がり負け犬が 飼い慣らされた貧しい暮らし 2019-087:豊 国防の気概を消した豊かさに 君を守ると歌う軽率 2019-088:喩 好物を食べていたとき舌を噛む 恋の痛みを喩えるならば 2019-089:麺 限られた時と予算でカップ麺 言葉にならぬ想いでお湯を 2019-090:まったく ストーリーにまったくならない恋だけど 涙と笑顔傷つけながら
2019-081:暮 日常と異なる涙夕暮に 流しに行こう不倫の旅路 2019-082:米 米づくりする空晴れて清々し 日本に生まれ恋して老いて 2019-083:風呂 雨上がり臥待月の露天風呂 川・湯・虫の音ささやく二人 2019-084:郵 絵葉書を郵送したく宛名問う メール送れど返信はない 2019-085:跳 蝶を追い跳ねる子犬の力失せ 花散るように貴女のもとへ
2019-076:愉 不愉快な別れも風が吹き消して またゆっくりと歩き出す恋 2019-077:もちろん 暗闇をわかりあえない明るさも もちろん好きさでもねさよなら 2019-078:包 言葉では包みきれない群衆が 自傷ごっこに誘う週末 2019-079:徳 言葉では伝えきれずにキスをした すぐに徳利は冷たくなった 2019-080:センチ 今日もまた心休まる寝ぐらまで あと数センチ届か…
2019-071:名残り ありあまる陶器冷たさ増してゆく 家族団欒あの日の名残り 2019-072:雄 雄として生きてゆけずに亡き母の ふるえる乳首吸いにいきたい 2019-073:穂 稲穂らは食われるために実るのか なぜ生きてきた風にふるえて 2019-074:ローマ アメリカの夢追いかけて英会話 すぐに挫折しローマ字でBAKA 2019-075:便 便りなきままの歳月冷え冷えと 出逢…
2019-066:珍 虚しさの雪降る街は珍味さえ 涙のような味がするだけ 2019-067:アイス 粉雪をアイスにかけて微笑めば 白い孤独もほんのり甘く 2019-068:薄 粉雪をとかすくらいのキスでいい 薄いスープに慣れてきたから 2019-069:途 あの事は水に流そう粉の雪 つもる話も中途半端に 2019-070:到 添い遂げることは到底無理だけど やむな粉雪キスの間は
2019-061:消費 移り香の賞味期限は過ぎ去れど 消費できない義理チョコの山 2019-062:曙 曙光のスポットライト寝乱れの 隠しきれない欲をさらして 2019-063:慈 小夜時雨母の慈愛の温もりを 手酌の燗にふと思い出す 2019-064:よいしょ くらくらと貴女に会いに行く時も よいしょと老いの口癖をまた 2019-065:邦 言霊を失ったまま浸みついた 邦語の瓦礫また嘘を…
2019-056:通 枯葉道通過していくカップルの 微笑み真似てまた増えた皺 2019-057:カバー 傷つけてしまったあの日冷えきった 枕カバーが奪った眠り 2019-058:如 若いころ真面目な顔でついた嘘 兵士の如く君を守ると 2019-059:際 水際に立てば会話も虚しくて 手の温もりを分かち合うだけ 2019-060:弘 弘前の城の桜の剪定は 林檎育む技術活かして
2019-051:貼 気弱だと決めつけられて喋れない 口にテープを貼られたみたい 2019-052:そば 幻影のそばにたたずむ過去未来 涙枯れても今などなくて 2019-053:津 ふられ雨津波のように水は増し 乾く心が悦ぶ不幸 2019-054:興奮 大人にはなれないままの微笑みで 興奮しない消化試合を 2019-055:椀 夜明けまで哀しむ酒を飲みたくて 止め椀残し雨降る街へ
2019-046:かわいそう かわいそう ごめんね君は僕のこと 知りすぎたよね愛より先に 2019-047:団 青春の団体さんが過ぎて行く 涙と笑顔ため息と花 2019-048:池 星屑が孤独の池に消え沈む 僕の影さえ呼吸を止めた 2019-049:エプロン エプロンで涙隠した手料理が 甘すぎたから笑うしかない 2019-050:幹 絵の幹に花のため息束ね塗る 過ぎ去りし日の悲恋の色で