さんが書いた連載旅1の日記一覧

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「キツイからだよ」:伊香保温泉泊赤城山登山③

テレビを点けたら、安倍首相が役員会で辞意を表明したと大騒ぎしている。 記者会見まで時間がある。赤城山の事を書いておこう。 伊香保温泉のホテルを出る時、私達を担当した仲居さんにチップを渡した。初めてこんなことをする。 朝食も同じ女性が担当した。食後一度部屋に戻りチェックアウトに向かう際、二階で降りた。厨房らしき部屋に男性職員がいた、この人も昨日見た。まさか二人で全ての業務をこなしているのでは…

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「大浴場にはまた誰もいなかった」:伊香保温泉泊赤城山登山②

バスが停まっている。サービスエリアには沢山車が停まっているが、バスは目立つ。 どの窓にも人の姿が見えた。若い人が多い。「新宿バスタ」。観光バスだ。コロナで全く見なくなったものの一つだ。今旅に出る人は、殆どが自家用車なのだろう。 車のナンバープレートを見るのが習慣になっている。首都圏ばかりだ。 ホテルの駐車場でも見たかったが、殆ど車が停まっていなかった。 フロントもガランと…

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「電車に乗ったら気を付けたいこと」:伊香保温泉泊赤城山登山①

「笑ってください」 確かにそう聞こえた。私は「週刊現代」を読んでいた。顔を挙げた。 車内は誰一人ぴくりとも反応せず、スマホを見ている。 車両の真ん中に仁王立ちになり、こちらを見ている。ヤツだ。さっき私の前を歩いて行った。その時も「週刊現代」を読みふけっていたのに、顔を挙げた。 マスクがおかしい。パンティストッキングのお尻辺りを切り、それをマスク代わりにしている。 今度はそれを頭全体に被っ…

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「旅のチラシが入った」

新聞を片付けようとチラシを手に取った。やけにカラー写真が沢山載っている。旅のチラシだ。 コロナになってから初めてだ。裏表つぶさに見た。これを申し込みたい、あれもいい。あれもこれも全部申し込みたい。 『旅して日本を盛り上げよう!Go To Travelキャンペーン』「最大でご旅行代金の半額相当が補助されます」「バス一台につき19名様以下」 例えばこんな旅もある。 「一名一室同旅行代金!」 …

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「巨木が取り囲む諏訪大社」:美ヶ原高原③

前日に行き、近くで一泊すると、翌日朝早い時間に山に辿り着く。今回泊まったのは浅間温泉。 大浴場はまたもや貸し切り状態。掃除が徹底している上に、客が少ないので非常に清潔感がある。独り占めしたお風呂から見下ろす街並みはずっと見ていたかった。 淺間温泉に行く前に諏訪大社に立ち寄った。道の両脇にある飲食店に目が行く。どこも駐車場に車はない。開店はしているが、店内に客の姿がない。首都圏の「第一波」の…

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「ボンベがない」:美ヶ原高原②

美ヶ原高原という名前から山ではないと思うが、「日本百名山」の一つに入っている。 もっとも「日本百名山」は、深田久弥が実際に自分で登った山から選んだものだ。山として立派な「山格」があり、歴史もあり、標高1500㍍以上の山から百座を選んでいる。 「美ヶ原」は原っぱだが、標高2000㍍ある。 駐車場でナンバープレートを見るのが癖になっている。川崎、熊谷、多摩、千葉、京都や大阪方面もある。 車を…

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「出掛ける前を楽しむ」:美ヶ原高原①

具体的に出掛ける予定があると、毎日が楽しくなる。最近ずっとウキウキしていた。 抗癌剤で髪の毛が抜けカツラになっていた頃だ。自分からは一切友人に連絡を取らず、友人も恐らく遠慮したのだ。何一つ予定がない事がいかに味気ないか。 友人の一人が「来年⚪⚪へ行こう」と誘ってくれた。 具体的に何月何日に行く予定を立てた。ただ「元気になったら行こうね」は、病人を励まさない。具体的な予定はまさに生きる希望…

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「石楠花、石楠花、石楠花!」日光白根山②

イワカガミだ。もっと大きな花だった気がするが、高度の違いだろうか。 老神温泉で一泊し、朝6時からやっている朝市に行った。会場をコの字に取り囲む建物に横たわる大蛇は、はギネスブックにも登録されている巨大さで、誰でも建物内に入って見られるが、中に入る気にはなれない。何せ蛇だし、昨夜見た光景がまだしっかり残っている。 温泉街は廃墟だらけだった。灯りの点かぬ夜のホテルは、黒い窓が恐ろしい。錆びた橋…

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「群馬県民ですか?」日光白根山①

「群馬県民ですか?」 入口でマスクした男性に突然聞かれた。 「違います」 それから例の銃を額に向けられた。 「36.1度です」 嬉しい。私の平熱は35度台。癌細胞は低い体温が好き。 フロントにはシニア女性が説明を受けている。長い。 「3人でそんなに安いの?」 確かにここは全国一律価格の格安ホテル。だが、やって来た客にいきなりあんな事を聞くのは、群馬県民だけに特別な何かがあるのだ。 話し掛…

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「河津桜が満開」

山の斜面がピンク色に染まっている!あそこだ。 テレビが満開の河津桜を映した。松田?どこだろう。 伊豆半島の河津は、駅を降りたら人でごった返していたからもう行く気は無い。 神奈川県の松田町だ。「大井松田」はよく高速道路の渋滞情報で出て来る。 山の急坂を登るのだが、道は細い。爺様ガードマンに止められた。要所要所に係員が配置されているが、全員見事なシニアだ。普通のバスが満員の客を乗せて降りて…

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「一つで7年寿命が延びる」

息子は黒卵を探している。一度来た事があるのだ。 真っ黒な卵はバラ売りしていないようで、5個入りだ。そんなに食べられるか。 ゆで卵を食べる場所がある。殻を入れる箱の傍には塩もある。 一つ手に取ると温かい。不思議に殻は綺麗に剝ける。 食べた。食べやすい。もう1個食べた。息子も二個食べた。残りをどうする? 「オカン、食べるよ。」 3個も食べた。人生初。 伊豆半島の帰りに箱根大涌谷に寄る。…

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「山全体が天然記念物?!」in伊豆半島大室山

そもそも伊豆に行きたいと思ったのは、大室山。去年訪ねた時、濃い霧で全く見えなかった。たかが600メートルに満たない山が見えない。 一泊二日間で「自然あり歴史あり文化の香りありで温泉付き」という我が儘な要求を満たしてくれる場所。 スマホ上で指を滑らせていると「百名山」という文字が通り過ぎた。そうだ、山だ、山もいい。 一日目は雨で翌日は雪が降るとテレビは煩いほど警告していたが、去年伊豆に来…

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「若い頃行った場所を訪ねてみたくなる」in熱海

伊豆に連れて行けというオカンのワガママを聞いてくれた息子。 翌日は雪の天気予報。降ったらホテルはキャンセルを覚悟したが、起きると雨だった。予定通り待ち合わせ場所に向かうが、例によってかなり早く出る。 乗換の品川駅で、普段なら絶対に買わない高目のあれやこれやを買い込む。ワインのお店ではこんなことまで。 「やっと平日にワイン買って旅に出る身分になりました」 「行ってらっしゃいませ。楽しんで来て…

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『旅は不便を楽しむ』:伊豆大島④

翌朝は曇り空。宿は素泊まり。早朝から食べさせる店が元町港の真ん前にあるという。 港に行くと、曇り空に虹が架かっている。ラッキー!宿にはフラれたが、これで挽回だ。海に架かる虹には遮るものがなく、見事な半円を描いている。 7時前なのに、なるほど店は開いている。だが、入ると誰もいない。出て来た店主は、ニコリともせず、体全体がこちらを威圧する雰囲気を纏っている。 奮発して1200円の丼物にする。唐…

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『今まで見えていなかっただけだ』:伊豆大島③

酔い止め薬が効いたのか、神経が図太くなったのか、大島に着くまで熟睡した。 窓の外は真っ暗。ここは岡田港。出航前に買ったコンビニのレタスサンドとトマトジュースで朝ご飯にする。 マーガリンたっぷりで食パンもねっとりしているのに、何層にも重なったレタスがシャキシャキして堪らない。これだけでも旅に出た嬉しさが増す安上がりのオカン。なんせ普段は玄米を食べている。 下船して振り返り、暗闇に浮かび上がる…

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『東京湾ナイトクルーズ』:伊豆大島②

「シンイチ~!シンイチはいませんか~?」 デッキに座る人は笑っている。 浜松町駅で待ち合わせた友人と東京タワーと反対側に歩く。忽ち深呼吸をしたくなる解放感。 東京タワーに向かって歩いた時や、世界貿易センターで夜景を見た時、自分だけが場違いな感じは否めなかった。 皆、ビジネスマンです、キャリアバリバリの若い女よと聞こえてきそうな歩き方だった。 こちらは皆大きなリュックと遊ぶ身なりだ。駅で…

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『東京の夜景を撮るなら』:伊豆大島①

若者が二人、床に座り込んでいる。窓際にはカメラ。ずっと撮っている。何が変化するのだろう。星空なら丸く光の軌跡が写せるが。 楽しそうだ。邪魔しちゃ悪いと微笑ましく見て、その場を離れた。 右手の窓を見た。スカイツリーだ。あの淡い光の輪は東京タワーとは全く違う。 東京タワーの方が圧倒的に力強い。光に温かみがあり、シンメトリーの美しさがある。 スカイツリーは細く儚げで、淡い光を身にまとう長身の美…

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「凄すぎて書きたくない」

朝はまだあんな風に一人参加を後悔していたのに、2日目のメイン大井川鐵道に乗ったらもう感動感激言うことなし。 大井川が造る渓谷の美しさ、川本来が持つ力強さ、自由奔放さ、雪国新潟の魚野川など到底適わないダイナミックさ。 蛇行する川を取り囲む山々の紅葉は、那須よりも、谷川岳よりも、比べ物にならないほどに故郷雪国に近かった。 赤や黄色やオレンジ色や、緑や茶色やあらゆる色がそこにあり、一つひとつの色…

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「贅沢は気付かない」

「朝食会場はどこですか?」 ロビーで開店準備をしている初老の男性に聞く。 「ここを出て、お風呂のある別棟の二階の~」 バスを降りる時に添乗員が一度説明し、ホテル前に停めたバスに乗り込んできたホテルの従業員らしき娘がもう一度言ったはずなのに、これだ。聞いてない。聞いても忘れる。しかも人のせいにする。 私の後から来たカップルも昨日の夕食会場のある二階で降りた。暗い。エレベーター前には準備中とある…

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「伊豆に行くなら石廊崎」

伊豆半島は何処に降りても楽しめる。熱海は今でも魅力的な街だし、太平洋を見下ろす美術館もある。房総半島と比べては双方に申し訳ないが、お洒落度は段違いだ。 どこに立ち寄ろうと左右に目を配りながら行くと、地元の人が集うような市場が稲取にあった。 大きな倉庫のような建物で野菜や海産物を売っている。爺様達が釜飯を作っていたので、早速買い求めた。あら汁は無料とある。 婆様が売っている押し寿司に醤油はあ…