さんが書いた連載読書の日記一覧

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『夜が明ける』

長かった。暗かった。重かった。 出掛ける時には必ず本を持って行く。電車でも読むが、ホテルでもたっぶり読める。シワ一つないまっさらなシーツにくるまって読むのは格別だ。 『夜が明ける』は旅先に持って行くかどうか迷った。あまりにも暗い。もう一冊軽い本も持って行き、そちらを読んでから手にした。 希望がどこにもない。高校生のときに出会った青年との友情が唯一救いなのだが、青年も主人公も過酷な現実の中で…

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「悲惨で不幸で理不尽な話」:『ある男』

読み終わった、平野啓一郎の『ある男』(文春文庫)。よかった、最後が明るく、いや、少しでも希望が見えて。 手軽に読める新書を立て続けに読んだ後、何かもやもやしたものが残った。誰だって「その日」までは寝たきりにならず、ボケもせず元気でいたい。だが、元気で長生きして、だから何なのだ、というか元気でいるための方法だけを知っても、それだけではダメなのだ。 たまたま駅ナカの本屋で「贅沢買い」した一冊だが…

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『70歳が老化の分かれ道』

立て続けに「老い」について。『70歳が老化の分かれ道』(和田秀樹著 詩想社)なんて言われたら、その直前にいる身としては気になる。副題が「若さを持続する人、一気に衰える人の違い」と来ては尚更だ。 目次が分かりやすい。 ◎第一章『健康長寿のカギは『70代』にある』 •「今の70代は、かつての70代とは全く違う」 しかり。 •「もはや70代は現役時代の延長でいられる期間となった」 納得。職場の同…

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「幾つになってもカッコいい秘密『老いる意味』」

本屋で好きな本を、好きなだけ買うのが、今一番の贅沢だ。 出来るだけ読み終わってから次の本を買うようにしているが、遠出する途中に立ち寄って無傷で店は出られない。旅は読書が進む。 『ヴァイタル·サイン』の次は、『老いる意味』(森村誠一著 中公新書ラクレ)。我ながら今更こんな本を読んでどうすると言いたいが、森村誠一の写真がカッコよかった。普通はそんな所に作者の写真など載せない場所に彼がいた。(そう…

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『ヴァイタル•サイン』

これは架空の話だ、現実はこんなハッピーエンドにはならず、今日もひたすら働いているのだろう。 9月18日の「東京新聞」に南杏子著『ヴァイタル-サイン』の紹介が載った。直ぐに駅ビルの本屋に行った。店員に聞いて調べてもらったが、ないと言う。 仕方がない、本屋を通さずスマホ様で買うか。アマゾンで買えるなら、本屋は要らない。 新聞にはこうあった。 「感情労働という言葉をご存じだろうか。肉体労働と頭脳…

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「真面目で賢くて優しい『長女たち』」

この一冊は感動モノでも新しい世界を見せてくれる訳でもない。どちらかと言えば知りたくない事を見せつける。 世の中にはワガママも言わず、しっかり者で優秀な長女タイプの女性がいる。年老いた親の面倒を見るのはそうしたタイプの女性だと言う。 最初の小説は『家守娘』。認知症を発症した母親のために仕事を辞め、介護の24時間体制に入るが、病気は容赦なく進んで行き、とうとう母親はとんでもない犯罪を犯す、娘を助…

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『三千円の使い方』

「お客様、もう一枚御座いますか?」 窓口に呼ばれた。他に客はいなかった。 「いえ、その一枚だけです。」 おかしな事を言う。 「13000円とありますが」 「!」 私は封筒を開けた時「18000円」と見間違え、そのまま銀行の用紙に書いていた。 「お客様、3万円ございますが」 「···」 なんてこった、指先の感覚まで鈍ったか。2万円取り出したつもりだった。オネーさんが差し出す用紙にもう一度記…

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「高田郁『あきない正傅』」

炊きたての光るご飯は、目にも舌にもご馳走だ。普段は玄米を食べているので、スイーツ並みに甘い。そしていつもホッとする。 本にもそんな物がある。高田郁だ。江戸時代に芯を持って生きた女性、それも歴史上の有名人ではなく、庶民を描く。 本は知らない世界や生き方をリアルに体験させてくれるが、これはまるでご飯のようにブレない生き方を描いている。 8月10日に11巻が出ると知り、買ったままま読んでいなかっ…

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「食堂のおばちゃんやおじちゃんが面白い」

「ワンコインが冷やし豚しゃぶのぶっかけうどん、小鉢は冷や奴とモヤシのナムル、味噌汁は冬瓜と茗荷、そして漬物は瓜の印籠漬け。これにドレッシング三種類かけ放題のサラダが付いて、ご飯味噌汁お替り自由。お代は7百円也。」 こんな定食があったらつい寄りたくなる。 「枝豆は塩茹でして食べるのが最もシンプルだが、クリームスープにしてもグリーンピースに劣らず美味しい。柔らかめに茹でて莢から出し、牛乳を加えて…

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「オリンピックは終わっても猛暑とコロナは続く」

「あの3冊以外に町田そのこの本はありますか?」 「文芸書はこちらの通路を左に行って〜」 目立つ処に平積みされた3冊は既に持っている。店員の案内通りに行ってみたが、見当たらなかった。次の発売はいつになるのだろう。10日は高田郁の本が出る。 『52ヘルツのクジラたち』を読んですっかり町田そのこにハマり、『コンビニ兄弟』と『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』を購入。 『52ヘルツ〜』はこれ以上の孤…

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『コンビニ兄弟』

温度計を見た、27.1度、湿度は78%。大して暑くないはずが暑い。エアコンを入れた。年を取ると温度に鈍感になると思っていたが、今年は暑い。 昨夜切り抜いた「ベストセラーランキング」を家計簿に貼ってみる。 本の売れ筋は毎週驚く程変わるが、今週は『52ヘルツのクジラたち』が一位だった。売れている期間が長い。5月も一位になった事がある。 作者の町田その子が気になった。美人なのだ。本を書く人、読…

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『52ヘルツのクジラたち』

高尾山に登る気になったのは他にも理由がある。本だ。 前の日から『52ヘルツのクジラたち』を読み始めた。『元彼の遺言状』と違い、初めからしっくり来た。途中で止める気にならなかった。 電車の中なら読める。うちから高尾山までは、約2時間。乗り換えは少なくしたかったので、快速で東京駅まで行き、そこから中央線の快速にした。 ところが夢中になり過ぎたのか、駅を出たら高尾山に登る小道が分からない。おかし…

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『元彼の遺言状』

これはもうタイトル勝ち。こんなタイトルを見たらまず素通り出来ない。 おまけに「たちまち20万部突破」、「2021年『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作」。 更には「欲しいものは自分で手に入れる 男が何度変わっても女友達は変わらない そんな私たちの当たり前の日常を伝えたくて書きました 令和の女は強いぞ!」 そもそも「元彼」には幾つになろうと魅力がある。そんな風に呼べる男がいようがいま…

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「新しい世界を見せてくれる芥川賞『推し、燃ゆ』」

玄関前に出て朝頂いたアガパンサスを門扉の中に入れた。丁度扉を閉めた時だ、何とも言えない気高いような香りに気付いた。 百合だ。百合の群れが芳香を放っている。真っ暗な空に突き出すように咲く花達。昼間は気付かなかった。 新聞で激賞されていた芥川賞受賞作『推し、燃ゆ』を読んだ。 冒頭。 「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。まだ詳細は何ひとつわかっていない。何ひとつわかっていないにもかかわらず、…

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「今すぐ本屋に行った方がいい;上野千鶴子の『在宅ひとり死のススメ』」

「高齢者のひとりぐらしも悪くない」どころじゃない。「ひとり暮らしがいちばん幸せ」ということが、データで裏付けられた。 上野千鶴子が「おひとりさまの老後」を出したのは2007年。その時高齢者の独居率は15:7%、それが2019年には27%になった。 子供と暮らしたいとか、子供がいないとか、孤独とか、孤独死とかを吹っ飛ばしてくれる。 施設に入居するのも嫌だ。 「年寄りばかりが集まって暮らさなけ…

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「初心忘れるべからず」:『非正規介護職員ヨボヨボ日記』

ハシリドコロの花がいつまでも枯れない。下向きに咲いている白い花。はておかしい。プランターには花を買った時に付いてくる表示版を挿してある。鬼灯、ホオズキ? スマホ様に聞いた。ホオズキだ。そう言えば同じプランターに植えた。消えなかったのか。代わりにハシリドコロが消えた事になる。 『非正規介護職員ヨボヨボ日記』を手にした。この本は新聞の紹介で知ったのだが、ヨボヨボのジイサンが、これまたヨボヨボの…

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「地下鉄に乗りたくなった浅田次郎の『おもかげ』」

浅田次郎の『おもかげ』を読み終わった。450ページもの大作だが、読み安い。 「涙なくして読めない最終章。新たな代表作」 「孤独の中で育ち、温かな家庭を築き、定年の日の帰りに地下鉄で倒れた男。切なすぎる愛と奇跡の物語。」 本書の冒頭は『たそがれとともに雪が落ちてきた』。一発でノックダウン。例えばこんなところも心を持っていかれる。 「正気を欠いてしまった夫婦を別れさせないよう、堀田は心を摧(く…

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「『進撃の巨人』が何故世界的ヒットをしたのだろう」

タイマツソウが咲いた。私はこの花が全開している時には全く興味がなかった。だが蕾を見た瞬間、ファンになった。 まるで宝石だ。蕾の中にキラキラ光るものがある。宝石の期間は短く、直ぐに凡庸な姿になる。 週末を娘家族と過ごした。有名なショッピングモールに行った。中にはショップや映画館、レストラン等が入り、ここだけで一日を過ごせる。 中に幼い子供を遊ばせる施設がある。大人一人千円位だろう。開店直後…

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「三島由紀夫の『宴のあと』」

こんな時間になってしまったが、眠気が来ない。最後まで読み切った。解説も面白い、三島由紀夫の『宴のあと』。 友人と郵便局の『レターパック』でお互いの「推し」を送りあった。これは安価で小さなものを送るのに重宝する。 政治の世界と初老の男女の恋愛が描かれている。主人公の女性が凡そ私が今まで読んでいた小説には出て来ないタイプで、「行動的」で「情熱的」で自分の魅力、特に「性的魅力」を自覚している。 …

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「順番なんて関係ない:『後悔病棟」

吉村昭の『関東大震災』を読んでいる時、あまりにも凄惨な場面の連続で、もう一冊「甘い」本を同時進行で読んでいた。 『後悔病棟』(垣谷美雨著)だ。去年GOTOトラベルでよく旅に出たが、駅ナカの本屋で買った小学館文庫だ。帯の「もしもこの歳で死ぬと知っていたら」、「人生はやり直したいことばかり」、「過去に戻れる聴診器をめぐるヒューマンドラマ」が目を引いたからだが、決定打は『累計15万部』だ。 「こ…