「さいごの恋」 クリスチャン・ガイイ  野崎歓訳

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クリスチャン・ガイイは1943年生まれのフランスの作家。若い頃はジャズのサックス奏者として音楽に携わり、作家に転向。44歳で作家デビューを果たしたそうだ。

この小説、感想を一言で言うと、「音楽を聴いているような感覚」をもたらす作品である。文章のリズムや、語り口により、例えば、ドビッシーを聴いているような気持にさせられる。説明的な文章が少なく、登場人物の思考と行動で物語が進み、音楽が情景を描写するかのように、文章で情景が表現される。

小説の主人公は作曲家で、病気で余命幾ばくと宣告されている。彼の作曲した弦楽四重奏の初演は、聴衆からブーイン