杉本苑子の「穢土荘厳(えどしょうごん) 上下」。

★3.7 聖武天皇の時代を第3者の眼で描く長編。

《上巻》
上巻は長屋王の変から天然痘の流行前夜までを描く。長屋王の変は王家に仕える手代夏雄と大伴子虫(実在)の視点で、女医綾児と鈴鹿王の裏切りを絡めミステリー調に描いていく。

長屋王を除くことを認めた聖武の気鬱の病も、一族の怨念を恐れたことを起点とする。

持統・元明・元正の蘇我氏系女帝と藤原氏との確執の系譜を背景に据え、持統・不比等亡き後の権力闘争を描く。

複雑な人間関係ではあるが非常に判り易い。聖武の皇子、皇女を生む県犬養広刀自の運命やいかに。行基の慈善事業も詳述している。

《下巻》
天然痘に