辻堂魁 の 暁天の志 風の市兵衛 弐

★3.5 第弐部の初作で21冊目。

文政7(1824)年、40歳の市兵衛は奈良吉野山にいた。金峯山寺の地下老分(じげおいぶん)・村尾一族の119歳の大婆のお告げで、江戸に住む唐木市兵衛が呼ばれたのである。吉野に都をおいた後醍醐天皇に仕え、その陵墓を守る地下人一族である。

市兵衛の母方の祖母の名は梢花といい大婆・篠掛(ささかけ)の娘だった。祖父・唐木忠左衛門は若かりし頃、興福寺で剣を修行し、仏師となったが梢花と駆け落ちしていたのだ。

そして江戸へ出て修行仲間の旗本・片岡賢斎に仕えたのである。片岡賢斎は忠左衛門より7つ年下だが、14歳で剣の修行に興福寺